米国が当事者となっている条約における知財章の有無等について

今日は米国の最近締結したFTA/EPAについて、概観してみたい。ほかにもあると思うので、適宜追記する予定。

米国はTrade Policy and Agendaというものを毎年公表しているので、transparentでいいですね。

https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/reports-and-publications/20202020 | United States Trade Representative

 

TPP

シンガポールニュージーランド、チリ及びブルネイで始まった交渉に、アメリカも参加を表明し、知財章にも大きな影響をもたらしたと考えられる。

2015年のアトランタ会合において大筋合意がなされ、翌2月に署名がなされたが(@NZ)、2017年1月にトランプ大統領により米国の脱退が表明された。

その後、再協議が行われ、2017年11月のダナンでの閣僚会合で11か国によるTPPにつき大筋合意に至り、2018年3月、チリでTPP11の署名が行われ、2018年12月30日に発効。TPP11では①TPP12を組み込んだうえ、②22項目(うち半数は知財)の凍結などが規定されている。

※国内手続きが完了した国は、メキシコ、日本、シンガポールニュージーランド、カナダ、オーストラリア、ベトナムの7か国。

TPP協定(和文)|外務省

環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定|外務省

USMCA

2017年ー2018年、北米自由貿易協定NAFTA)の加盟国が再交渉し、2018年9月に大筋合意、同10月に正式に合意、同11月ブエノスアイレスで署名。

その後、2020年7月1日に発効。

知財章はTPPを下敷きにしていると考えられる。

United States-Mexico-Canada Agreement | United States Trade Representative

EU

EUとの間では2013年から2016年にかけてTransatlantic Trade and Investment Partnership(T-TIP)の協議がされたようだが、頓挫した。

TTIPの中には知財章もあったようであり、EUのウェブサイトではポジションペーパーなども公表されている。

EU negotiating texts in TTIP - Trade - European Commission

イギリス

Brexitに備え、2019 年2月に米英通商交渉の詳細な交渉目標が公開された(2019 Trade Policy Agenda and 2018 Annual Report of the President of the United States on the Trade Agreements Program)。その中にはIntellectual Propertyの項目が含まれている。

早期妥結を目指して交渉中とのことだが、リリースされたらその内容は要注目。

U.S.-UK Trade Agreement Negotiations | United States Trade Representative

中国

中合意に知財章が存在する。Trade secretやプロバイダの責任、医薬品特許・データについて中国側に対応を迫るものが多く、アメリカの関心事や中国側の焦燥が感じられる内容となっている。

Economic And Trade Agreement Between The Government Of The United States Of America And The Government Of The People’s Republic Of China Text | United States Trade Representative

日本

日米貿易協定・デジタル協定には知財章はなく、TPP再加盟又はこれらの協定のアップデートの際に知財章が議論になるか。注視したい。

日米貿易協定|外務省

日米デジタル貿易協定|外務省

 

韓国とのFTAは2012なので少し古いので除外した。余裕があるときにチェックしたい。