USMCAの知財章
突然だが、今日はUSMCA(米メキシコカナダ)の知財章についての検討をしたい。
-
構成
USMCAの規定をみるとTPPと構成が非常に似ていることに気づかされる。完全に下敷きにしたというか、たたき台になっていることは間違いないだろう。
https://draftable.com/compare/SyZKqCEvLxnQ(機械比較)を参照。
※手元に機械比較を行うソフトウェアがないので、無料サービスを用いて比較した。初めて使ったが、PDFも比較対象にできるし、そこそこ性能がよさそう。
-
個別の条文の内容
詳細な分析は追って行う必要があるが、ざっと見た限り以下のような特徴が認められそうである。
- 締結義務のあるInternational Agreementが異なっており、Hague Agreement(意匠に関する条約)やBrussel Convention(番組伝送信号に関する条約)の締結義務も課されている。なお、特許法条約はTPPと同じく努力義務にとどまっている。
- CooperationとしてIPR Committeeの設置が定められている。
- TM/Country Name/GI/はほぼ同じか。
- Patent and Undisclosed Test or other Dataについては、生物製剤に関する規定がないことや、ジェネリック医薬品の調整に関する規定が異なるなど若干の違いがあるが、どのようなニーズによるものか要検討。
- Designについてはより詳細な規定が置かれている。部分意匠の規定を置くことが義務付けられているほか、Grace Period、保護期間(15年)、電子出願・データベースに関する規定が置かれている。
- Copyrightについての保護期間が少し異なっている(非自然人が公表した場合の保護期間が75年となっていて5年長い)こと、技術的保護手段についてより具体的な規定が置かれている。
- Trade Secretに関する章はTPPにはなかった。米中合意でもしっかりとTrade Secretの章が置かれていたことを踏まえると、米国がTrade Secretを重視していることがわかる。
- Enforcementでも詳細な規定がある。証明妨害に関する規定が置かれていたり、税関差し止めについてFTZ・保税倉庫の出し入れも対象になっていること、映画館の撮影がaudiovisual recording deviceの使用一般になっていること、ノーティス&テイクダウン制度の導入義務に関する規定が置かれていることなどが特徴的といえる。
総評
TPPの知財章はRCEP等と比較しても進んだ内容を定めているが、USMCAはTPPをより進めているといえるだろう。そして、Trade Secretの保護などアメリカの意向が反映されているように思われる。
その他参考
色々参考になりそうな記事もあるので、おって読みたい。また、自分の間違いが発覚したら恥ずかしいのでこっそり消したい。